REPORT
VOL.01
日本茶のトップブランド、八女茶の産地を訪ねて
八女茶×バーテンダー / The Bar Top Noteオーナー

CONTENTS 目次

MEMBER メンバー

バーテンダー / The Bar Top Noteオーナー
野間 真吾
SHINGO NOMA
18歳よりホテル、飲食店等勤務を経て、2013年に株式会社レオンハルトを設立。
広島市内に3店舗のオーセンティックバーを構え、現在はオーナーバーテンダーとして「The Bar TopNote」のカウンターに立つ。
国内外問わずカクテルトーナメントでの受賞歴も多数。
また、バーテンダーならではの感性で手掛けるオリジナルフレーバーティーの専門店も市内に2店舗展開。
酒類、紅茶に関する資格を取得するなど日々研鑽を積み、伝統を重んじながらも革新をもってバー文化の発展、後進の育成に取り組んでいる。
八女美緑園
八女美緑園製茶は、平成8年に茶農家五軒が集まって結成した農事組合法人です。
八女茶の栽培から製造、販売までを行い、生粋の八女茶を全国の皆様に直接お届けしています。
600年の歴史と恵まれた気候風土に育まれた茶処
野間/一面の茶畑!見渡す限りの緑のじゅうたんが何とも美しいですね! 江島さん、今日は八女茶について教えていただくのを楽しみにやってきました。
江島/遠くまでありがとうございます。野間さんは紅茶のプロということなので、日本茶にも詳しいと思いますが、ぜひ八女茶の魅力をご紹介させてください。
野間/よろしくお願いいたします。ではさっそくですが、八女茶の栽培規模や生産量、日本茶におけるシェアはどのくらいなんでしょうか。
江島/栽培面積は、日本茶全体が約3万9000ヘクタールといわれている中で、八女茶は約1400ヘクタール。生産量でいうと、全国で約7万5000トンのうちの約1200トンなので、2%に満たないくらいです。
野間/そんなに少ないのですね。産地として発展した背景についても教えてください。
江島/八女茶の発祥は、約600年前の室町時代です。一人の禅師さまが中国からお茶の種を持ち帰り、八女地方で栽培したのが始まりと伝えられています。この辺りは九州最大の河川である筑後川と、矢部川の清流に挟まれた筑後平野に位置しているので、肥沃な土壌と豊富な伏流水に恵まれています。さらに、日中と夜との寒暖差や、霧の発生しやすい環境といった気候風土のお陰で、特にお茶の栽培が盛んになりました。畑の立地は、平坦なところもあれば、中山間地や標高400〜500メートルという山地もあり幅広いので、玉露のような特徴的な茶種を栽培できるようになったのではないでしょうか。
野間/なるほど。栽培に最適な自然環境や気候風土に恵まれたことと、その環境を慈しみながら、生産者の皆さんが努力を重ねてこられたことで、日本茶のトップブランドに発展したんですね。
良質の原料と高い加工技術がなければ本当のおいしさは生まれない
江島/全国的に見たら八女で生産できるお茶の量は圧倒的に少ないので、他県の産地と同じようなお茶作りをしていたのでは経営が成り立ちません。ですから、よりクオリティの高いお茶を栽培するために何が必要なのか、どうしたらいいのかと試行錯誤を積み重ねてきたんです。その一つが、丁寧な土壌作りです。肥料をただ与えるのではなく、土壌分析に基づいて必要な肥料を必要なタイミングで与えます。それによって肥料のコストも環境への負荷も低減しながら、より高品質なお茶が栽培できるようになります。また、一般的には三番茶まで収穫することが多いですが、八女では品質を重視するために、二番茶までしか収穫しない生産者がほとんどです。
野間/科学的根拠に基づいて、環境に配慮した生産管理をなさっているんですね。さらに、量をたくさん作ることよりも、質を大切に栽培しているということですね。
江島/私たち生産者は、お茶を栽培して収穫するだけでなく、加工も行います。茶葉は生の状態ではすぐに酸化してしまうので、摘んだらすぐに工場へ運び、一次加工します。茶葉を蒸し、揉みと乾燥を行って「荒茶」の状態にするんです。
野間/お茶の味わいや香りを決める、重要な工程ですね。せっかくいい茶葉を栽培しても、高い加工技術がなければ、良いお茶にはならないですよね。
江島/その通りです。八女茶ならではのまろやかな甘みや、鼻に抜ける爽やかな香り、美しい水色を生み出すためには、良い原料と高い加工技術のどちらも欠かせないものなんです。
小さな産地から世界へ! 八女茶のマーケットはグローバルに
野間/「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたくらいから、海外でも緑茶への関心が高まっていますよね。特に欧米では健康志向もあって、緑茶ブームといえる状態が続いています。抹茶に関しては、定番といえるくらいに受け入れられているように感じます。
江島/そうですね。八女茶の輸出量も年々増加していますし、グローバルなブランディングにも取り組んでいます。私もPRのため、生産者代表として2020年1月にニューヨークへ行かせてもらいました。日本茶バーや、煎茶カフェを訪れて、現地の緑茶事情などを視察したことは、とても刺激になりました。でもまだまだ緑茶本来のおいしさを楽しんでいただけていないと感じることもあったので、しっかりと八女茶をPRして、緑茶の文化をもっともっと広めていきたいと感じています。
野間/海外での人気が高まる一方、国内では、緑茶の需要は減少しているんですよね。
江島/ペットボトル用やティーバッグの需要は比較的高いのですが、八女では、急須でいれて味わっていただくリーフのお茶が主力ですから、苦戦しているのは事実です。緑茶にはカテキンやテアニン、ビタミンCなど、心身の健康増進に役立つ成分が含まれていることも分かっていますし、今後ますます研究が進むと思います。おいしさとともに健康効果にも、ぜひ注目していただきたいですね。私たち生産者も、しっかり発信し続けていくつもりです。
野間/海外でも日本でも、八女茶の市場がさらに拡大していくことを楽しみにしています。
江島/ありがとうございます。2023年には、八女茶発祥600年という節目を迎えます。その年の「全国茶品評会」が福岡県で開催されることになっているので、例年以上に高い評価を得られるよう、生産者みんなで準備をしているところです。ぜひ、ご期待ください。
野間/八女茶の魅力が、今以上に引き出されるかもしれないですね。これはますます八女茶から目が離せません。楽しみにしています!
DATA 施設概要
住所
店舗
URL
監修などの仕事
  • 元広島市観光PR隊 2013~2017
  • 広島県観光プロモーション 牡蠣食う研 (カキングダム)メンバー
  • 究極のレモンサワーの監修
  • SAKURAO DISTILLERY(中国醸造株式会社)
  • Sakurao Gin World Brand Ambassador & 監修
  • 海外でのゲストバーテンダー多数
  • 里山 Cocktail Award HIROSHIMA  2017
    酒造組合会長賞 & 特別賞